
医療機関のWeb予約、予約変更、問診入力、マイページなどが使えなくなったとき、単に「システム障害が発生しています」と載せるだけでは、予約済みの患者が来院してよいのか、予約が記録されているのか、どこへ連絡すべきか判断できません。原因を急いで断定すると、後の調査結果と食い違い、個人情報の漏えい有無について誤解を招くこともあります。
厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版と令和8年度チェックリストは、インシデント時の組織内・外部関係機関への連絡体制、診療継続に必要な情報と復旧手順、サイバー攻撃を想定した事業継続計画を確認項目にしています。また、サイバー攻撃やその疑い、医療情報システムの障害が発生した場合には、厚生労働省等への必要な連絡を行うよう案内しています。
この記事では、2026年10月18日時点の厚生労働省、個人情報保護委員会、IPAの公表資料をもとに、医療機関が予約システム障害をWebで伝えるときの5つの確認を整理します。技術的な復旧手順や個別事案の法的判断ではなく、患者が次の行動を判断できる公開情報の作り方に焦点を当てます。平時の診療時間・予約リンク管理はGoogleマップの診療時間と予約、フォームの入力項目は医療サイトの問い合わせフォーム設計もあわせてご覧ください。
結論:告知は「確認済みの事実・患者の行動・次回更新」を一組にする
障害告知では、発生または確認した日時、利用できない機能、影響する予約、患者にお願いする行動、代替連絡先、次回更新予定を一画面にまとめます。原因、漏えい、復旧時刻は、確認できた範囲だけを書き、未確認事項を確定表現にしません。診療継続の判断、システム調査、行政等への報告、本人通知、Web更新は担当を分けつつ、同じインシデントIDと時刻で管理します。
Web告知は、厚生労働省や個人情報保護委員会への報告、影響を受ける本人への通知の代わりになるとは限りません。一方で、患者が予約・来院・連絡方法を判断するための運用情報として、事実確認と承認を経た告知ページを用意しておくことには意味があります。
予約システム障害のWeb告知で揃える5つの確認
1.障害・サイバー攻撃・漏えいを推測で一括りにしない
最初に、どのシステムで、いつ異常を確認し、どの機能が利用できないかを整理します。予約閲覧だけが止まっているのか、予約登録や変更もできないのか、院内の診療システムにも影響しているのかを分けます。調査中の段階では「原因を調査中」「個人情報への影響を確認中」のように確認状態を示し、「サイバー攻撃」「漏えいなし」「復旧済み」と断定するのは根拠が揃ってからにします。
公開前に、院内の責任者、システム事業者、セキュリティ担当、広報担当の確認順を決めます。ログや調査に影響する操作をWeb担当だけで進めず、技術対応と公開文の更新を分けて記録します。厚生労働省への連絡や、漏えい等が疑われる場合の個人情報保護委員会への報告要否は、Web告知とは別に責任者が確認します。
2.患者に影響する予約の範囲を具体化する
「予約システム」とだけ書かず、Webからの新規予約、予約変更・取消、予約確認、事前問診、通知メールなど、影響する機能を列挙します。対象期間や施設・診療科が分かる場合は示し、既存予約が保持されているか未確認なら、その状態も明記します。予約済みの患者に一律の再予約を促すと重複や混乱が起こり得るため、院内で照合した対応方針に合わせます。
診療を通常どおり行うのか、一部変更するのか、来院前に確認が必要なのかを、医療機関の決定に基づいて案内します。緊急性の高い症状に関する個別判断をWeb制作担当が行わず、医療機関が定める緊急時の連絡先や公的な相談先へつなぐ表示とします。オンライン診療を含む場合はオンライン診療のWeb案内も参考にし、メールやチャットだけで診療が完結するような誤認を避けます。
3.代替連絡先を「実際に受けられる量」へ合わせる
電話、臨時フォーム、別の予約手段を案内する前に、受付時間、対象者、必要事項、対応できる件数を確認します。障害中の予約システムと同じ基盤にあるフォームを代替先にせず、電話が集中する場合は、予約済み・当日受診・新規予約などの優先順位と折り返し方法を決めます。診療内容や病歴を一般メール、SNSの公開コメント、管理できないDMへ送るよう促しません。
公式サイトのお知らせ、予約ページ、トップページ、電話案内、Googleビジネスプロフィールなど、患者が確認する面の文言と更新時刻を揃えます。すべての媒体を同時に直せない場合は、基準となる告知URLを一つ決め、他の媒体からそこへ案内します。通常の診療時間や所在地まで変更したように見えないよう、障害による一時的な案内と恒常情報を分けます。
4.公開告知・本人通知・行政等への報告を分ける
個人情報保護委員会は、医療・介護関係事業者で漏えい等またはそのおそれが生じた場合、内部報告と被害拡大防止、事実調査、影響範囲の特定、再発防止、要件に応じた委員会への報告と本人通知が必要と案内しています。本人通知では、概要、対象となる個人データの項目、原因、二次被害またはそのおそれ、本人が取り得る措置などを、本人の権利利益を守るために必要な範囲で分かりやすく伝えます。
Webでの公表は、本人への通知が困難な場合の代替措置になり得ますが、公表すれば常に個別通知が不要になるわけではありません。個人情報保護委員会は、公表が一律の義務ではない一方、事案に応じて望ましい場合があり、公表によってかえって被害が拡大する可能性がある場合は公表しないことも考えられるとしています。公開範囲と内容は、二次被害、調査、本人保護を踏まえて個別に判断します。
5.次回更新時刻と復旧後の履歴を残す
初報には、次に更新する予定時刻または「新しい事実を確認次第更新」と記載し、公開日時と更新日時を分けます。状況が変わらなくても、確認を継続していることと次回更新予定を示せば、古い告知なのか判断しやすくなります。IPAの実践例でも、連絡先、責任者、伝える内容、重大時の対外公表判断をあらかじめルール化し、訓練で見直す考え方が示されています。
復旧時は、利用可能になった機能、未解消の制限、予約情報の確認方法、問い合わせ先を再確認してから「復旧」と表示します。初報を消して終わりにせず、更新履歴、復旧確認者、影響期間、必要な本人対応、再発防止策の公表方針を台帳へ残します。告知ページを後で削除・統合する場合も、院内記録と関係者への通知履歴は保持します。
障害告知台帳に残す項目
- インシデントID、確認日時、発生日時、公開日時、更新日時
- 影響する施設・診療科・予約機能・対象期間
- 予約済み情報の確認状態と患者にお願いする行動
- 代替連絡先、受付時間、対象者、対応上限、停止条件
- Web、予約ページ、電話案内、外部プロフィールの掲載先
- 確認済み、調査中、未確認を分けた事実一覧
- 院内責任者、事業者、セキュリティ、広報、法務・個人情報担当の確認順
- 厚生労働省等への連絡、個人情報保護委員会への報告、本人通知の確認状況
- 次回更新予定、復旧条件、復旧確認者、更新履歴
- 訓練日、公開テンプレート、障害後の改善事項
よくある質問
原因が分からなくても告知できますか?
できます。原因を推測せず、確認日時、利用できない機能、予約への影響、代替連絡先、次回更新予定など、確認済みの運用情報を示します。後から判明した事実は更新日時とともに追記します。
「個人情報の漏えいはありません」とすぐ書いてよいですか?
調査で確認できていない段階では避けます。「現時点で確認されていない」と「漏えいがないことを確認した」は異なります。公開文は調査責任者と個人情報担当の確認を受け、影響範囲が変われば更新します。
Web告知だけで本人通知になりますか?
一律にはいえません。報告対象となる漏えい等では、本人への通知が原則として必要になる場合があります。Web公表は、本人通知が困難な場合の代替措置となり得ますが、事案ごとに要件と内容を確認します。
復旧したら障害告知は削除してよいですか?
患者に不要な混乱を与えないよう表示位置を下げることは考えられますが、復旧時刻、残る制限、予約確認方法を示し、院内の更新履歴と対応記録は残します。個人情報の本人対応や再発防止の公表が必要な事案では、それらと整合させます。
公開前チェックリスト
- 障害、サイバー攻撃、漏えいの確認状態を分けた
- 影響する予約機能、施設、診療科、期間を示した
- 予約済み患者の行動と再予約の要否を確認した
- 代替連絡先が実際に受付可能で、障害基盤から独立している
- 公開コメントや一般メールへ診療情報を送らせていない
- Web、予約ページ、電話案内、外部プロフィールの文言を揃えた
- 行政等への連絡、本人通知、Web公表を別に確認した
- 公開文を院内責任者、システム・個人情報・広報担当が確認した
- 公開日時、更新日時、次回更新予定、復旧条件を記載した
- PC・スマートフォンでリンク、電話番号、横スクロール、表示順を確認した
まとめ:患者が次に取る行動を、確認済みの事実から示す
予約システム障害時のWeb告知は、原因の早期断定ではなく、影響する機能と予約、患者の行動、代替連絡、公開告知と本人通知の違い、次回更新を揃えることが中心です。平時から連絡体制、告知テンプレート、承認順、掲載先、復旧条件を決め、診療継続の計画と同じ台帳で訓練します。
平時の診療時間・電話番号・予約先の統一は医療機関の掲載情報を揃える手順、医療機関サイトでの個人情報の扱いはプライバシーポリシーもご確認ください。
障害時のWeb告知フローを準備したい医療機関へ
株式会社メディカルアトラクトでは、医療機関の予約・問い合わせ導線について、影響範囲、代替連絡先、公開テンプレート、確認者、掲載先、次回更新、復旧条件を一つの告知台帳へ整理します。お問い合わせページから、対象サイト、予約システム、普段の連絡手段、障害時に更新できる担当者をお聞かせください。初回の相談では、患者向けに先に示す情報、確認待ちにする表現、障害中に使える代替導線、院内・事業者・制作会社の更新順を具体化できます。
Web制作・運用を含む支援範囲はサービスページ、制作・運用例は制作実績ページをご覧ください。
本記事は株式会社メディカルアトラクト編集部(医療マーケティング・Web運用担当)が、厚生労働省、個人情報保護委員会、IPAの公表資料を2026年10月18日に確認して作成しました。
参考にした一次情報
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版(厚生労働省)(2026年10月18日確認)
- 令和8年度版 医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト(厚生労働省)(2026年10月18日確認)
- 医療分野のサイバーセキュリティ対策について(厚生労働省)(2026年10月18日確認)
- 医療・介護関係事業者における漏えい等発生時の対応(個人情報保護委員会)(2026年10月18日確認)
- 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編、個人情報保護委員会)(2026年10月18日確認)
- 漏えい等事案の公表に関するFAQ(個人情報保護委員会)(2026年10月18日確認)
- インシデント発生時の顧客への通知・連絡・公表手順(IPA)(2026年10月18日確認)
本記事は2026年10月18日時点の公表資料に基づく一般的なWeb・情報発信運用の整理であり、個別案件への法律上、医療上、サイバーセキュリティ上の助言ではありません。障害時の診療継続、サイバー攻撃対応、行政等への報告、本人通知、公表の要否と内容は、事案、影響範囲、法令、ガイドライン、契約、自院規程により異なります。実際の対応は医療機関の管理者、医療情報システム安全管理責任者、個人情報・法務担当、システム事業者、必要に応じて所管機関または適切な専門家へ確認してください。本記事は厚生労働省、個人情報保護委員会、IPAの提携・監修を受けたものではなく、障害防止、復旧時間、法令適合、検索順位、問い合わせ、来院、売上を保証しません。