
企業動画のロケ撮影では、撮りたい場所を決めてカメラを持ち込むだけでは準備が終わりません。施設の所有者・管理者は誰か、道路や公園をどのように使うか、機材やスタッフが通行へ与える影響、周辺への案内、画面に入る人やポスター・音楽を公開時にどう扱うかまでが、一つの撮影計画につながっています。
『公共の場所だから自由に撮影できる』『小規模だから申請は不要』と一律に判断すると、撮影当日の中止や場所変更、編集での大幅な差し替えにつながります。一方で、道路使用許可、道路占用許可、都市公園内の行為許可、施設管理者との利用合意は、根拠・窓口・条件が同じではありません。撮影内容と場所ごとに、実際の管理者・許認可窓口へ早めに確認することが重要です。
この記事では、2026年10月15日時点の内閣府、警察庁、国土交通省、名古屋市、文化庁、個人情報保護委員会等の一次情報をもとに、企業動画のロケ撮影を公開まで進める5つの確認を解説します。空撮を行う場合は企業のドローン撮影、出演者を明確に起用する場合は企業動画の出演同意もあわせてご覧ください。
結論:場所・行為・公開範囲を同じ撮影票にする
ロケ撮影の可否は、場所の名称だけでは決まりません。同じ歩道や公園でも、手持ちで短時間撮るのか、三脚・照明・ケーブルを置くのか、出演者やスタッフが集まるのか、通行を誘導するのか、車両を使うのかで確認先と条件が変わります。
企画段階で、撮影場所、管理者、撮影日時、人数、機材、設置物、占有範囲、通行への影響、音、電源、車両、撮影する画角、公開媒体・期間・地域を一枚の撮影票にします。その撮影票を施設管理者、道路・公園等の窓口、制作会社、発注者の共通資料にすると、申請と現場運営、公開前レビューを切り離さずに進められます。
企業のロケ撮影で揃える5つの確認
1.ロケハンで『場所の管理者』と『行うこと』を分けて確認する
最初に、候補地の住所と境界を地図・写真で確認し、建物、敷地、道路、公園、駅、商業施設など、それぞれの所有者・管理者と問い合わせ窓口を特定します。見た目が連続した広場でも、管理主体や利用条件が途中で変わることがあります。施設を借りる合意だけで、隣接する道路や公園の利用まで認められるとは限りません。
ロケハンでは、カメラ位置だけでなく、三脚、照明、録音、ケーブル、発電機、控室、荷物置き場、車両の乗降、スタッフの待機、通行誘導の場所を図面へ落とします。撮影時間の前後に必要な搬入・設営・撤収も含め、通常利用者の動線、騒音、照明、電源、火気、夜間利用、雨天時の代替まで管理者へ確認します。
内閣府を中心とする関係省庁は2025年3月25日に『ロケ撮影ハンドブック』を公表し、製作者に対してコンプライアンスを基本とした撮影、フィルムコミッションや許認可権者との連携、地域住民の理解を含む準備を整理しています。大規模撮影に限らず、窓口が分からない段階では地域のフィルムコミッションへ相談し、管理者や必要な手続の手掛かりを得る方法があります。
2.施設利用、道路使用、道路占用、公園利用を一つにまとめない
施設内の撮影は、所有者・管理者の利用規約、申請書、料金、撮影可能範囲、公開先、クレジット、原状回復等を確認します。施設名や外観を広告・採用・営業目的の動画で使えるか、許可が撮影行為だけなのか公開利用まで含むのかを曖昧にしません。
道路上でロケーションや撮影会等を行い、一般交通に著しい影響を及ぼす場合は、道路交通法に基づく道路使用許可の対象となり得ます。警察庁は、撮影内容や地域の特性を踏まえた事前相談、地域住民・道路利用者との合意形成、複数管轄にまたがる場合の調整を案内しています。単に『道路で撮る』という情報だけで自己判断せず、場所を管轄する警察署へ、図面、日時、人数、機材、安全対策、交通への影響を伝えて確認します。
道路へ物件を継続して設けて使用する場合などは、道路管理者の道路占用許可が別に関係することがあります。道路使用許可は警察、道路占用許可は道路管理者が窓口であり、両方が必要なケースもあります。機材や車両の置き方がどの手続に当たるかは、実際の道路管理者と警察へ確認します。
公園も自由撮影と一律には言えません。例えば名古屋市は、商業目的の写真撮影やテレビ・映画等の動画撮影、場所の一部または全部を独占する行為等について、都市公園内行為許可と使用料を案内しています。受付期間、提出書類、料金、許可条件は自治体や施設で異なるため、撮影地の最新ルールを確認します。
3.早期相談に使える申請パッケージを作る
許可の種類を推測して申請書だけを先に出すのではなく、相談相手が撮影の影響を判断できる資料を揃えます。基本パッケージには、企画概要、責任者・連絡先、場所の広域図と詳細図、撮影日時と予備日、出演者・スタッフ数、機材・車両、カメラと照明の位置、一般利用者の動線、安全要員、搬入・撤収、公開媒体、緊急連絡、保険の有無を入れます。
なごや・ロケーション・ナビは、名古屋市内の道路使用許可申請の提出代行について、管轄警察署への事前相談、地図、企画書・概要書、道路幅や安全対策が分かる図、可能であれば台本抜粋等を案内しています。提出代行の受付期限や警察署での処理期間も示されていますが、これは同窓口の支援条件です。全国一律の日数と誤解せず、撮影地の窓口へ余裕をもって確認します。
台本や香盤表を変更し、人数、時間、機材、車両、動線、道路上の行為が変わった場合は、取得済みの許可・合意の範囲に収まるかを再確認します。許可書は当日携帯し、条件と連絡先を現場責任者だけでなく制作チームへ共有します。
4.現場の安全と周辺調整を、許可取得後も続ける
許可が下りたことは、安全が自動的に確保されたことを意味しません。歩行者・車両の動線、ケーブルの養生、三脚や照明の転倒防止、機材監視、熱中症・悪天候、夜間照明、音量、緊急車両の通行、撤収時の原状回復を当日の手順へ落とします。通路を無断で塞いだり、撮影スタッフが公的な権限を持つように通行人を制止したりしない運用が必要です。
警察庁は、ロケ撮影に伴う道路使用について、地域住民や道路利用者等との合意形成が必要不可欠とし、撮影内容・地域特性に応じて説明会や協力依頼文等を検討するよう案内しています。すべての撮影で同じ告知方法が必要という意味ではありません。店舗、住民、学校、公共交通、施設利用者など、実際に影響を受ける相手と、管理者・許認可窓口の助言に沿って範囲と方法を決めます。
当日は開始前に、許可条件、立入範囲、通行確保、撮影中止の判断者、事故・苦情時の連絡先を短く共有します。予定外の場所・時間・演出へその場で広げず、条件変更が必要なら撮影を止めて管理者と確認します。事故や物損、苦情が発生した場合の記録方法も決めておきます。
5.通行人・施設表示・著作物・音を公開前に確認する
撮影許可と、映像に含まれるすべての人・物を公開利用できることは別です。出演者は同意した媒体・期間・編集・二次利用の範囲を確認し、通行人や来訪者が識別できる場合は、画角変更、撮影時間の変更、撮り直し、ぼかし等を検討します。個人情報保護委員会は、顔画像や映像・音声も個人に関する情報に含まれ得ると説明し、撮影場所、目的、態様、必要性、管理方法などを踏まえて肖像・プライバシーへの配慮が必要と案内しています。
背景のポスター、絵画、キャラクター、店内音楽等には著作権等が関係します。文化庁は、主な撮影対象に付随する著作物の写り込みについて、付随性・軽微性、正当な範囲、権利者の利益を不当に害しないこと等を前提とする規定を説明しています。『少し映ったら必ず自由』『背景ならすべて許諾不要』というルールではありません。演出として目立たせたものや、動画の訴求に利用するものは、許諾、差し替え、ぼかし、消音等を個別に検討します。
編集後は、画面と音声を通しで確認し、許可条件、公開媒体・期間、施設名・ロゴ、ナンバープレート、住所表示、名札、端末画面、通行人、著作物、収録音をチェックします。第三者から素材を受け取った場合も、撮影許可と公開範囲の記録を引き継ぎます。音源の確認は企業動画のBGM、撮影素材の保管は企業動画の撮影データ管理も参考にしてください。
ロケ撮影票に残す項目
- 企画名、目的、発注者、制作会社、現場責任者、緊急連絡先
- 候補地の住所・境界、所有者・管理者、許認可窓口
- 撮影日、予備日、搬入、設営、本番、撤収の時間
- 出演者・スタッフ数、機材、照明、録音、電源、車両
- カメラ・機材・待機場所、通行動線、安全要員を示す図
- 施設利用、道路使用、道路占用、公園利用等の確認結果
- 許可番号、条件、使用料、携帯書類、変更時の連絡先
- 店舗・住民・学校・交通機関等への案内範囲と担当
- 出演同意、通行人、施設表示、著作物、音の処理方針
- 公開媒体、公開期間、地域、広告利用、二次利用、削除対応
- 事故・物損・苦情・中止・原状回復の記録先
よくある質問
歩道で手持ち撮影をするだけでも道路使用許可が必要ですか?
撮影場所だけでは一律に判断できません。道路上の行為が一般交通へ与える影響、人数、機材、滞留、通行誘導、車両利用等によって確認が必要です。道路使用許可の要否を自己判断せず、具体的な撮影計画を場所を管轄する警察署へ伝えて確認してください。
施設の撮影許可があれば、動画公開の許可も含まれますか?
必ず含まれるとは限りません。利用合意で、撮影場所・日時に加え、公開媒体、広告利用、公開期間・地域、施設名・ロゴの扱い、編集、二次利用、クレジット、公開前確認の要否まで確かめます。
通行人はモザイクをかければ必ず公開できますか?
ぼかしは選択肢の一つですが、それだけで常に問題が解消するとは限りません。服装、声、行動、場所、同行者等から識別できる可能性や、撮影の目的・態様も含めて検討します。人が入らない画角・時間への変更、再撮影、音声処理も組み合わせます。
背景にポスターや店内BGMが入ったら全部削除が必要ですか?
すべてが直ちに削除対象というわけでも、すべて自由に使えるわけでもありません。文化庁が説明する写り込みの要件と、映り方・使い方を確認します。訴求の中心として使う、長く明瞭に映す・聞かせる、演出上配置する場合は、付随的な写り込みとは分けて許諾等を検討します。
公開前チェックリスト
- 候補地の所有者・管理者・許認可窓口と境界を確認した
- 搬入から撤収までの人数、機材、車両、設置物を図にした
- 施設利用と道路使用・道路占用・公園利用を分けて確認した
- 許可・合意の条件、料金、公開範囲、変更時の連絡先を記録した
- 一般利用者の通行、ケーブル、転倒、騒音、天候の安全策を決めた
- 周辺の店舗・住民・学校・交通機関等への調整範囲を確認した
- 出演者と通行人の識別可能性、同意・ぼかし・再撮影を確認した
- 施設表示、ロゴ、ポスター、絵画、音楽、ナンバー等を確認した
- 許可条件と最終編集、公開媒体・期間・二次利用が一致している
- 許可書、同意、編集判断、公開版を同じ案件台帳に保存した
まとめ:許可申請は、撮影当日ではなく公開までの設計
企業のロケ撮影では、ロケハンで管理者と境界を特定し、施設利用、道路使用・道路占用、公園利用を分け、判断に必要な資料で早期相談します。その後も、安全、周辺調整、出演者・通行人、著作物・音、公開範囲を同じ撮影票で管理することが大切です。
申請書を出すことだけを目的にせず、『誰が、どの条件を確認し、変更時にどこへ連絡し、最終映像を誰が確認するか』を決めると、当日の中止や公開後の差し替えを減らせます。
ロケ撮影の準備と公開フローを整理したい方へ
株式会社メディカルアトラクトでは、企業動画の企画に合わせて、候補地、管理者・相談窓口、必要な資料、安全配置、出演・映り込み、公開条件を一つの撮影台帳へ整理します。お問い合わせページから、撮影したい場所、動画の用途、予定時期、人数・機材、許可確認で困っている点をお聞かせください。初回の相談では、早く確認すべき管理者・窓口、制作会社と発注者の担当分け、ロケハンで確かめる項目、公開前レビューへ残す証跡を具体化できます。
動画制作を含む支援範囲はサービスページ、制作例は制作実績ページをご覧ください。
本記事は株式会社メディカルアトラクト編集部(動画制作・Web担当)が、内閣府、警察庁、国土交通省、名古屋市、文化庁、個人情報保護委員会等の公表資料を2026年10月15日に確認して作成しました。
参考にした一次情報
- ロケ撮影に伴う道路使用許可申請について(警察庁)(2026年10月15日確認)
- 道路使用許可(警察庁)(2026年10月15日確認)
- 道路占用許可手続(国土交通省)(2026年10月15日確認)
- 都市公園の行為許可(名古屋市)(2026年10月15日確認)
- 道路使用許可申請の提出代行について(なごや・ロケーション・ナビ)(2026年10月15日確認)
- 令和2年著作権法改正・写り込みに係る規定(文化庁)(2026年10月15日確認)
- 民間事業者向け カメラと個人情報保護法(個人情報保護委員会)(2026年10月15日確認)
本記事は2026年10月15日時点の公表資料に基づく一般的な動画制作・ロケ準備の整理であり、個別の法律上・許認可上の助言ではありません。必要な許可・届出・合意、受付期間、料金、条件は、場所、管理者、撮影方法、地域、公開用途等により異なります。実際の撮影前に、施設管理者、管轄警察署、道路管理者、公園管理者、フィルムコミッション等の最新案内を確認し、必要に応じて適切な専門家へ相談してください。本記事は掲載機関の提携・監修を受けたものではなく、撮影許可、公開可否、事故防止、権利処理、再生数、検索順位、問い合わせ、売上を保証しません。