
企業動画のBGMを選ぶとき、雰囲気に合う曲を見つけるだけでは確認は終わりません。同じ音楽でも、自社紹介として公開するのか、商品やサービスの広告として配信するのか、YouTubeだけで使うのか、InstagramやTikTokにも展開するのかによって、確認すべき条件が変わります。
この記事では、2026年9月5日時点の文化庁、JASRAC、YouTube、Instagram、TikTokの公式資料をもとに、企業動画でBGMや効果音を選ぶ際の実務を5つに整理します。個別の利用可否は楽曲、音源、契約、公開方法で異なるため、この記事だけで法的な判断を確定せず、判断が難しい場合は権利者、提供事業者または専門家へ確認してください。
本記事は一般的な情報提供であり、弁護士等による法律相談に代わるものではありません。当社へのご相談は制作・運用設計の範囲であり、個別の権利処理に関する法的判断は行いません。
最初に分ける:「楽曲」と「音源」は同じではない
音楽を動画で使うときは、作詞・作曲された楽曲と、演奏や歌唱を録音した音源を分けて考えます。JASRACは、市販CDやダウンロードした音源を利用する場合、楽曲の著作権とは別に、音源製作者やアーティストの著作隣接権について許諾が必要だと案内しています。
たとえば、JASRACと契約している動画投稿サービスへ一定の範囲で管理楽曲を投稿できる場合でも、市販音源をそのまま使えるとは限りません。また、JASRAC管理楽曲を企業や商品・サービスの宣伝目的動画に使う場合は、広告目的複製の手続きが必要です。「投稿できるサービスだから大丈夫」「CDを購入したから使える」と一つの条件だけで判断しないことが出発点です。
企業動画のBGMを選ぶ5つの確認
1.利用目的と公開先を、編集前に一覧にする
最初に、動画をどこで、何のために、誰のアカウントから公開するかを書き出します。自社サイト、YouTubeの通常投稿、Instagramのリール、TikTokの企業アカウント、広告配信、イベント上映、営業資料への組み込みでは、同じ完成動画でも利用条件が同じとは限りません。
公開後に広告へ転用したり、短尺版を別のSNSへ投稿したりする予定があるなら、その展開先も最初から確認対象に入れます。JASRACの案内では、管理楽曲を用いた広告を配信する場合、広告目的複製と配信に関する手続きが示されています。広告目的複製では、事前に楽曲を管理する音楽出版社(管理しない楽曲は著作者)へ利用可否や使用料などの条件を確認します。SNS等への投稿と広告枠への出稿でも確認の流れが分かれています。まず「媒体」「アカウント種別」「地域」「期間」「通常投稿か広告か」を一枚にまとめます。
2.どの音源ファイルを使うかまで特定する
曲名だけではなく、実際に編集ソフトへ読み込む音源ファイルの入手元を確認します。自社で作曲・収録した音源、制作会社から提供された音源、ストック音源、プラットフォーム内の音源、市販音源では、確認先と利用範囲が異なります。
「著作権フリー」「ロイヤリティフリー」という表示だけで判断せず、商用利用、広告利用、SNS投稿、クライアントワーク、加工、複数媒体への掲載、利用期間、地域、クレジット表記の条件を読みます。購入や契約の主体が制作会社の場合、納品先の企業が公開・再編集できる契約かも確認します。
3.プラットフォーム提供音源は、その利用範囲を読む
各サービスの音源ライブラリは便利ですが、別のサービスでも同じように使えるとは限りません。YouTubeは、YouTube Studioのオーディオ ライブラリにある音楽と効果音をYouTube上で著作権上安全に使用できると案内し、Creative Commonsの音源では説明欄への帰属表示が必要だとしています。一方で、YouTubeは外部の音楽ライブラリやYouTube外での利用について保証していません。
Instagramの公式ヘルプでは、ライセンス済み音楽ライブラリは個人的・非商用の利用を想定し、一部のビジネスアカウント等では利用できない場合があると説明しています。商用目的ではMetaサウンドコレクション(Meta Sound Collection)を利用できる場合があります。TikTok for Businessは、企業向けのCommercial Music Libraryについて、地域と利用可能な配置を選び、選択したCommercial Soundsを通常投稿または広告で利用できると案内しています。
したがって、プラットフォーム内で選べたことだけを根拠にせず、アカウント種別、対象地域、通常投稿・広告の別、プラットフォーム外への持ち出し可否を公開時点で確認します。
4.ライセンスと確認結果を、動画ごとに残す
公開時に問題がなくても、担当者の異動、契約プランの変更、動画の再利用で確認経緯が分からなくなることがあります。動画IDや案件名ごとに、曲名、音源提供元、音源URL、ライセンス名、取得日、購入者、契約プラン、公開媒体、広告利用、地域・期間、必要なクレジット、確認担当者を記録します。
文化庁の令和8年度版「著作権テキスト」は、権利者の了解を得る場合、利用する著作物を特定し、利用目的、使途、使用料、報告義務などの条件を確認したうえで、契約内容を文書に残すことが重要だと説明しています。利用規約やライセンス画面はURLだけでなく、取得日時が分かる形でも保存し、請求書や許諾メールと関連付けます。
5.二次利用に備えて、差し替えられる納品物にする
公開先が増えるたびに完成動画を一から作り直さないよう、BGM入りの完成版だけでなく、音楽を外したマスター、ナレーション、効果音、BGMを分けたデータを管理します。契約上許される範囲で、縦型・横型や尺違いの編集プロジェクトも整理しておくと、利用条件に合う音源への差し替えがしやすくなります。
制作会社へ依頼する場合は、「使用する音源名」だけでなく、「どの媒体へ、通常投稿か広告か、いつまで、誰が公開するか」「将来どこへ転用する予定か」を共有します。納品時には、利用条件の一覧と音源を外した書き出しの有無を確認します。
よくある誤解を、公開前に止める
- 購入した音源なら自由に使える:購入は音源の所有や再生と、動画への利用許諾を同じ意味にしません。
- 短い秒数なら問題ない:利用時間だけで一律に許諾不要とは判断できません。
- クレジットを書けば使える:帰属表示はライセンス条件の一つであり、許諾そのものの代わりにはなりません。
- SNS内で選べた音源は広告にも使える:個人利用、通常投稿、広告、アカウント種別で範囲が分かれる場合があります。
- 制作会社へ任せれば確認不要:公開主体と二次利用の範囲を発注側も把握し、証跡を受け取る必要があります。
動画制作の前半で行う実務フロー
- 企画書に公開媒体、アカウント、地域、期間、広告利用、二次利用を記載する
- 候補音源ごとに楽曲と音源の権利、入手元、契約条件を確認する
- 公開先の最新の音源ライブラリ規約と表示条件を確認する
- 確認結果を音源台帳へ記録し、必要な許諾やクレジットをそろえる
- 音楽を外したマスターも保管し、公開直前に媒体別の条件を再確認する
BGM確認を編集の最終日に回すと、差し替えでカットのリズムや字幕のタイミングまで変わることがあります。候補曲を決める段階で権利と利用範囲を確認すると、企画、編集、公開を一つの工程として進めやすくなります。動画全体の設計は企業動画制作で企画前に決める5つのこと、音声情報の伝え方は企業動画の字幕設計も参考にしてください。
公開前チェックリスト
- 動画の利用目的、公開媒体、アカウント種別、地域、期間を記録した
- 通常投稿と広告配信、将来の二次利用を分けて確認した
- 楽曲の権利と、実際に使う音源の権利をそれぞれ確認した
- 音源ライブラリの商用利用、広告、持ち出し、帰属表示の条件を確認した
- 音源名、提供元、ライセンス、取得日、証跡、担当者を台帳へ残した
- 必要なクレジットを説明欄や公開画面へ反映した
- 音源を差し替えられるマスターと制作データを管理した
- 判断が難しい利用は、公開前に権利者や専門家へ確認した
まとめ:BGMは「曲選び」ではなく「使い方の設計」から始める
企業動画のBGMは、雰囲気だけで決めるのではなく、楽曲と音源、公開目的、媒体、アカウント、地域、期間、二次利用を一つの表で確認することが大切です。プラットフォームの音源ライブラリも、提供範囲と最新条件を読んで使います。
メディカルアトラクトでは、制作・運用設計の範囲で、動画の目的と公開先の整理、台本・撮影・編集、字幕や音源の確認項目、SNSへの展開までを一連の制作工程として設計します。「自社の場合、どの公開先を前提に音源と納品物を決めればよいか」「横型の会社紹介と縦型のSNS動画をまとめて設計したい」という方は、お問い合わせフォームからご相談ください。初回の相談では、予定している媒体と二次利用を整理し、企画段階で決める項目と制作・運用の進め方を具体化できます。サービス内容と制作事例もご覧いただけます。ご入力内容はお問い合わせへの回答とご提案の連絡に利用し、プライバシーポリシーに基づいて取り扱います。
本記事は株式会社メディカルアトラクト編集部(動画・SNS制作担当)が、文化庁、JASRAC、Google(YouTube)、Meta(Instagram)、TikTokの公表資料を2026年9月5日に確認して作成しました。
参考にした一次情報
- 文化庁「著作権テキスト-令和8年度版-」(2026年9月5日確認)
- JASRAC「YouTubeなどの動画投稿(共有)サービスでの音楽利用」(2026年9月5日確認)
- JASRAC「広告の配信」(2026年9月5日確認)
- YouTube ヘルプ「オーディオ ライブラリの音楽と効果音を使用する」(2026年9月5日確認)
- Instagramヘルプセンター「Instagramのライセンス音楽ライブラリの利用」(2026年9月5日確認)
- TikTok for Business「How to Use the Commercial Music Library」(最終更新2026年7月、2026年9月5日確認)
本記事は2026年9月5日時点の公表資料に基づく一般的な動画制作・SNS運用上の考え方を整理したもので、個別案件への法律上の助言ではありません。各サービスの機能、利用条件、権利処理の手続きは変更される場合があるため、実務では最新版をご確認ください。本記事は文化庁、JASRAC、Google(YouTube)、Meta(Instagram)、TikTokの提携・監修を受けたものではありません。判断が難しい場合は、権利者、提供事業者または適切な専門家へご相談ください。