
企業動画の字幕は、話した言葉を画面に並べるだけの装飾ではありません。誰が話しているか、どの音が場面の意味を伝えているか、どのタイミングなら読み切れるかまで設計して初めて、音声を聞き取りにくい人や音声を使わずに見る人にも内容を届けやすくなります。
自動字幕は下書きを速く作る助けになりますが、固有名詞、数字、専門用語、話者の切り替わりまで正しいとは限りません。この記事では、企業動画とショート動画の字幕を公開前に整える5つの確認を、2026年8月31日時点の公式資料に沿って解説します。
字幕とテロップは、目的が違う
強調したい言葉や見出しを演出として置くテロップと、音声情報を文字で伝えるキャプション(字幕)は役割が異なります。W3Cはキャプションを、会話だけでなく、内容理解に必要な効果音、音楽、笑い声、話者などを含む音声情報の代替と説明しています。
デジタル庁の「ウェブアクセシビリティ広報向けガイドブック」も、話されている内容に加えて、意味のある効果音や音楽が流れていることを字幕に含めるよう案内しています。「ナレーションの文字起こしがあるから完成」とせず、音だけで伝えている情報が残っていないかを確認します。
最初に決める:クローズドか、焼き込みか
字幕には、視聴者が表示と非表示を切り替えられるクローズドキャプションと、映像に直接入れて常に表示するオープンキャプション(焼き込み字幕)があります。デジタル庁のガイドブックは、文字サイズや色、表示位置を利用者が調整でき、制作者も映像を再編集せず字幕だけを修正しやすいことから、利用できる場合はクローズドキャプションを優先するよう推奨しています。
ただし、公開先がクローズドキャプションに対応していない場合や、短い広告動画で画面上の文字演出も含めて届ける場合は、焼き込み字幕が必要になることがあります。制作前に公開媒体と掲載方法を決め、動画本体とは別に、校正済みの字幕原稿とタイムコードを残しておくと、媒体ごとの展開や修正に対応しやすくなります。
企業動画の字幕を整える5つの確認
1.音声だけで伝えている情報を洗い出す
ナレーションと会話を書き起こした後、画面を消して音声だけを確認します。場面転換を知らせるチャイム、緊張感を示す音楽、ドアが閉まる音、画面外の話者など、理解に必要な情報があれば、簡潔な説明を字幕に加えます。一方、意味を持たない雑音や言いよどみまで機械的に入れる必要はありません。
2.固有名詞・数字・専門用語を元資料と照合する
自動字幕では、会社名、商品名、人名、地名、金額、日付、略語が誤変換されることがあります。台本、公式サイト、承認済み資料など、公開時点の根拠へ戻って一つずつ照合します。医療や採用など、誤記が判断に影響しやすいテーマでは、制作担当者だけで完結させず、情報を管理する担当者が最終版を確認します。
YouTubeも、自動字幕は話し手の発音の誤り、アクセント、方言、雑音などにより音声を正しく表現できない場合があるため、公開者が確認し、誤りを編集するよう案内しています。自動生成は完成品ではなく、校正前の原稿として扱います。
3.一度に読ませる文字量と表示時間を調整する
音声をそのまま長文で表示すると、読み終わる前に字幕が切り替わります。デジタル庁のガイドブックでは、字幕の目安として1秒あたり6〜8文字程度が示されています。これは一律の保証値ではなく、読みやすさを確認する出発点です。文の区切り、画面の情報量、専門用語の難しさに合わせて調整します。
字幕を二行にする場合も、文節の途中で不自然に分けないようにします。スマートフォンの実機幅で再生し、文字が小さすぎないか、表示が短すぎないか、早いカットの連続で読み疲れないかを確認します。
4.重要な映像や操作表示を隠さない
字幕が人物の口元、商品、図表、注意事項、動画プレイヤーの操作領域と重なると、別の情報を失わせます。W3Cの解説でも、字幕が映像内の関連情報を覆ったり妨げたりしないことが参考情報として示されています。縦型ショート動画では、投稿文、アカウント名、操作ボタンなどが動画の上に表示されるため、公開画面のプレビューで重なりを確認します。
背景によって文字が消えないよう、字幕に十分なコントラストを持たせます。焼き込み字幕では文字の縁や半透明の背景を使い、明るい場面と暗い場面の両方で読めるかを通して確認します。
5.公開先の字幕機能で、もう一度校正する
YouTubeでは、タイムスタンプ付きの字幕ファイルをアップロードする方法、文字起こしを自動同期する方法、手動入力する方法が用意されています。視聴者は対応動画で字幕の表示・非表示や文字の設定を変更できます。TikTokも自動字幕を提供しており、クリエイターは生成された文字を公開前に編集でき、視聴者は表示・非表示を選べると案内しています。
編集ソフト上で正しく見えても、アップロード後の変換で改行やタイミングが変わることがあります。公開前の限定表示などを使い、音声あり、ミュート、スマートフォン、PCの各条件で、最初から最後まで確認します。字幕のオン・オフ、誤字、音とのずれ、画面要素との重なり、リンク先までを一つの公開物として点検します。
字幕制作の実務フロー
- 公開媒体と動画の目的を決める
- 確定台本から字幕原稿を作る
- 話者と必要な効果音・音楽情報を加える
- 固有名詞、数字、専門用語を根拠資料と照合する
- タイムコードを付け、読みやすい長さに分ける
- クローズドキャプションを設定し、必要な媒体だけ焼き込み版を作る
- 公開画面でPC・スマートフォン・ミュート再生を確認する
- 承認済み字幕原稿と動画の版をひも付けて保管する
動画全体の目的、視聴者、導線をまだ整理できていない場合は、企業動画制作の企画で決める5つのことから確認すると、字幕に何を残すべきかも判断しやすくなります。医療機関の投稿では、字幕を含む公開画面全体を承認する流れを医療機関のSNS運用。医療広告に配慮した公開前レビューで解説しています。
公開前チェックリスト
- 字幕と演出用テロップの役割を分けた
- 会話だけでなく、理解に必要な話者・効果音・音楽を確認した
- 会社名、人名、商品名、数字、専門用語を根拠資料と照合した
- 自動字幕を最初から最後まで人が校正した
- 文字量、表示時間、改行をスマートフォンで確認した
- 字幕が人物、商品、図表、注意事項、操作表示を隠していない
- 背景が変わっても字幕を読める
- 公開先で字幕のオン・オフとタイミングを確認した
- 承認済みの動画と字幕原稿の版が一致している
まとめ:字幕は編集の最後ではなく、企画から設計する
企業動画の字幕は、アクセシビリティ対応と情報の正確さを同時に支える制作要素です。公開媒体を先に決め、音声情報を洗い出し、自動字幕を校正し、読みやすさと重なりを実際の画面で確認することで、伝える内容を落としにくくなります。
株式会社メディカルアトラクトでは、動画の目的整理、構成・撮影・編集に加え、字幕原稿、媒体別の書き出し、公開後の運用までまとめて設計します。自社の動画ではクローズドキャプションと焼き込み字幕をどう使い分けるべきか相談したい方、企画・制作・運用を一つの流れで整えたい方は、お問い合わせページから予定している動画と公開媒体をお聞かせください。必要な字幕データ、確認担当、媒体別の納品形式まで具体的に整理できます。ご入力内容はお問い合わせへの回答とご提案の連絡に利用し、プライバシーポリシーに基づいて取り扱います。
対応領域はサービスページ、動画・SNSなどの制作事例は制作実績ページでもご覧いただけます。
本記事は株式会社メディカルアトラクト編集部(動画・SNS制作担当)が、デジタル庁、W3C、YouTube、TikTokの公表資料を2026年8月31日に確認して作成しました。
参考にした一次情報
- DS-672.1 ウェブアクセシビリティ広報向けガイドブック(デジタル庁、2026年6月1日)
- Understanding Success Criterion 1.2.2: Captions (Prerecorded)(W3C WAI)
- 字幕を追加する(YouTube ヘルプ)
- 自動字幕起こし機能を使用する(YouTube ヘルプ)
- 字幕の設定を管理する(YouTube ヘルプ)
- アクセシビリティ(TikTok)
本記事は2026年8月31日時点の公開情報に基づく一般的な制作上の考え方を整理したもので、個別案件への法律上・医療上の助言ではなく、字幕対応による視聴数や問い合わせの増加を保証するものではありません。公開媒体の機能や仕様は変更される場合があるため、制作時には各サービスの最新情報をご確認ください。本記事はGoogle(YouTube)、TikTok、デジタル庁、W3Cの提携・監修を受けたものではありません。